IT業界でシステムエンジニアとして客先常駐の仕事に従事していると、より高い収入を目指して独立を考える方が増えています。
特に、システムエンジニアリングサービス(SES)として働くエンジニアの中には、独立して裁量のある働き方を実現したいという願望を持つ方が少なくありません。実際、独立系エンジニアとして新たなキャリアをスタートさせ、収入面で大きな成果を上げている事例も数多く見受けられます。
本記事では、雇用形態の違いや独立のメリット・デメリット、そして収入向上のための具体的なアプローチ方法について詳しく解説していきます。これからのキャリアプランを考える上で重要な判断材料となりますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.SESとは?基本の仕組みをおさらい SESの特徴と契約形態 SESが選ばれる理由 SESは「楽すぎ」なのか? SESエンジニアからの卒業を考えるタイミング 2.フリーランスで働くメリットとリスク フリーランスのメリット1:年収アップの可能性 フリーランスのメリット2:働き方の自由度 フリーランスのメリット3:自分の価値を自分で高められる フリーランスのリスク1:安定収入が保証されない フリーランスのリスク2:税務や保険などの手続きが自己責任 フリーランスのリスク3:キャリア形成の難易度 3.SESエンジニアとフリーランスの違いを整理する 違い1:契約形態 違い2:年収とマージン 違い3:リスクの所在 違い4:キャリア形成 4.SESフリーランス年収UPの秘訣|5つのステップ ステップ1:現在のスキルを棚卸し ステップ2:ポートフォリオや実績を可視化 ステップ3:フリーランスエージェントを活用 ステップ4:上流工程やPMO案件への挑戦 ステップ5:案件の掛け持ちで収入を増やす 5.SESからフリーランスへの転身Q&A Q1:SESとフリーランス、結局どちらが得なの? Q2:SESフリーランスになっても「変わらない」って聞くけれど? Q3:SESで個人事業主として働くメリットはある? Q4:スキルや経験の足りない人がフリーランスになるには? 6.フリーランスとして成功するための心構え 経理・税務知識を身につける 案件獲得のための営業力 セルフマネジメントと継続的学習 人生設計も踏まえて選ぶ 7.まとめSES(System Engineering Service)は、IT企業がエンジニアの労働力や技術力を提供し、クライアントのプロジェクトを支援するビジネスモデルです。エンジニアは自社(SES企業)と雇用契約を結び、クライアントに常駐して業務にあたります。
たとえば、システム開発やインフラ構築、保守運用など幅広い案件が存在します。労働力を提供する契約形式(準委任契約)が一般的であり、成果物の納品義務はありません。
SESは、自社で人員を抱えきれない企業が、必要なスキルを持つエンジニアを効率よく調達できる点で重宝されています。特に大規模プロジェクトでは、常時エンジニアを雇用するリスクを避けながら、必要な人数を確保することが可能です。一方でエンジニア側も、未経験の分野に挑戦できるチャンスが多い、さまざまな現場を経験してスキルセットを豊富にできる、といったメリットがあります。
検索ワードの中には「SES 楽すぎ」というフレーズを見かけることがあります。現場によっては、定型業務中心で負担が少ないケースも確かにありますが、すべてのSESが楽とは限りません。
炎上案件に当たると、むしろ休日出勤や残業が続くこともあります。SES企業やクライアントのプロジェクト内容によって、労働環境は大きく異なるため、一概に「楽すぎ」と断言することはできません。
エンジニアの仕事に慣れてきた段階で、「自分のスキルをもっと直接的に評価してほしい」「自由に働いて収入を伸ばしたい」など、ステップアップを検討する人は少なくありません。一般的に、経験年数が3〜5年程度になると、転職やフリーランスを意識し始める傾向があります。
もちろん、SES企業でのキャリアアップも可能ですが、ここではフリーランスという選択肢を中心に考えていきます。
SESエンジニアがフリーランスに転身する最大のモチベーションは、年収アップが狙いやすい点です。SES企業は受注した案件の単価からマージンを差し引いてエンジニアに給与を支払う構造です。そのため、いくらエンジニア個人が優秀でも、会社の利益や運営コストが差し引かれ、報酬に大きく反映されにくい場合があります。
一方、フリーランスであればクライアントと直接契約することも可能です。案件単価を高めに設定しやすく、スキルや経験が認められればさらに報酬の増額交渉も期待できます。
フリーランスという働き方では、案件を選ぶ自由度が高まります。たとえば、週3〜4日勤務やリモートワーク中心の案件など、ライフスタイルや家族の状況に合わせて働き方をカスタマイズしやすい特徴があります。SESであれば「フル常駐」が求められることが多いですが、フリーランスなら在宅勤務やスキマ時間活用の働き方も狙えるのです。
ただし、高単価案件ほどフルコミットの常駐を要求されることは少なくありません。
フリーランスになると、自分のスキルを市場がどのように評価しているのかを肌で感じやすくなります。経歴やポートフォリオ、実績などがダイレクトに報酬に反映されるのです。さらに、高度な専門分野や難易度の高いプロジェクトに積極的にチャレンジすれば、その経験が次の高単価案件の受注につながります。
自分の市場価値を高めたいエンジニアにとっては、成長意欲をかきたてられる働き方と言えるでしょう。
一方で、フリーランスの最大のリスクは、案件が途切れるとそのまま無収入になる点です。SES企業に所属している間は、稼働がない期間でも基本給が保証されますが、フリーランスにはありません。クライアントとの契約終了やプロジェクトの中断で、急に収入がゼロになるリスクを常に抱えることになります。
フリーランスとして働く場合、個人事業主(または法人設立)としての手続きが必要です。開業届の提出や青色申告の準備、国民健康保険・国民年金の切り替えなど、会社員時代に会社が負担してくれていた諸手続きをすべて自分で行う必要があります。
加えて、案件が増えれば請求書や経費精算といった事務作業も膨らむため、エンジニアリングに集中できる時間が相対的に減ってしまう可能性があります。
フリーランスのエンジニアは、「即戦力」としてプロジェクトに参画することが多く、未経験の分野や上流工程への挑戦は簡単ではありません。たとえば、プロジェクトマネジメントを経験していない人がいきなりPMの案件を受注するのは難しいのが現実です。
SES企業に所属していると、社内研修や先輩のOJTを受けながら徐々にスキルアップが可能ですが、フリーランスはそうしたサポートを受けにくいため、自己学習や人脈作りが欠かせません。
SESエンジニア:雇用先はSES企業であり、クライアントとの関係は基本的にSES企業が担う。エンジニアは給与という形で報酬を得る。
フリーランス:個人事業主または法人としてクライアントと業務委託契約を締結。契約条件によってはフリーランスが直接交渉や請求業務を行う。
SESエンジニア:SES企業のマージン率が高い場合、エンジニア本人の取り分が抑えられることがある。また、企業の経営判断や社内ルールにより昇給が決まるため、個人の裁量は低め。
フリーランス:契約単価は自分次第。クライアントと直接契約すれば高単価を実現しやすい。ただし案件獲得力や交渉力も求められる。
SESエンジニア:プロジェクトが中断しても、雇用契約が続く限り安定収入が得られる。保険や税務も会社がサポート。
フリーランス:案件が終了すると無収入になる。経理・確定申告、保険の手続きはすべて自己管理が原則。
SESエンジニア:社内研修や上司・同僚のサポートを受けつつ、未経験領域や上流工程にも挑戦しやすい環境がある。
フリーランス:基本的に即戦力扱い。未経験分野への進出はハードルが高く、自力で学習や実績作りをする必要がある。
まずは、自身のプログラミングスキルや設計・要件定義の経験、リーダーシップなどを整理してみましょう。市場ニーズの高いプログラミング言語やフレームワークの実務経験がある場合、フリーランスでも高単価を狙いやすくなります。
たとえば、クラウド関連(AWS、Azureなど)の知識やPythonを用いたAI・データ分析の経験など、将来性の高い分野のスキルは価値が高まっています。
自分の強みや成功事例を資料化し、わかりやすくまとめましょう。具体的には、GitHubにコードを公開したり、開発実績の画面遷移や仕様を整理したポートフォリオサイトを作るなどの方法があります。特にフリーランスエンジニアとして仕事を得るには、クライアントに「この人なら安心して任せられる」と思ってもらうための実績アピールが必須です。
SES企業在籍中に担当した開発プロジェクトの成果や役割を、できる範囲でまとめておきましょう。
フリーランスとしていきなりクライアントを開拓するのは、営業リソースや人脈が必要です。そこで、フリーランス向け案件を専門に仲介するエージェントを活用する方法があります。エージェントと契約することで営業や契約事務の負担が軽減され、比較的スムーズに案件を獲得できるでしょう。
また、エージェント経由だと契約形態も明確で、報酬トラブルを避けやすい点はメリットです。
年収アップを目指すなら、開発の上流工程(要件定義や基本設計など)やPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)といったマネジメント寄りのポジションを狙うのも有効です。SESからフリーランスへ転向後、プログラマーよりも上流工程の経験者が不足している案件を狙うことで、案件単価を大きく引き上げられます。
ただし、上流工程は経験者を優先するクライアントが多いため、まずはSESの現場や転職先などで一度経験を積むことが望ましいです。
フルタイム常駐案件だけでなく、週1〜2日作業のスポット案件やコンサル案件も存在します。自分の時間と体力に余裕があるなら、複数の案件を掛け持ちすることで月収をさらに上乗せすることが可能です。
ただし、あまりにも多くの案件を受けると、納期管理や品質管理に支障が出る恐れがあるため、スケジュール管理には十分に注意しましょう。
答えは「状況による」と言わざるを得ません。SESは安定収入と保険などの福利厚生を確保できる一方で、給与単価やアサイン案件を自分で選べない場合があります。フリーランスは高収入が期待でき、働き方に自由度がある反面、案件確保が途切れるリスクや自己管理の負担が増すのも事実です。
自分のライフステージやスキルセット、やりたいキャリアビジョンに照らし合わせて選択しましょう。
「SESからフリーランスになっても仕事が変わらず、単価が大差ない」というケースもあります。これは、フリーランスといえどもSES契約(準委任契約)で常駐するだけであり、事実上SES企業からの派遣と変わらない働き方になっている状況です。
高単価を狙うのであれば、商流の浅い案件や直接取引の案件を探せるエージェントやコネクションを使いましょう。
一部のSES企業では、社外フリーランスとの業務委託契約を中心にプロジェクトを回しているところもあります。個人事業主として契約することで、案件ごとに自由度が上がったり、税務上の優遇(青色申告控除など)が得られる可能性があります。
ただし、契約内容やマージン率によっては会社員時代より報酬が伸びない場合もあるので注意が必要です。
スキルセットが不足している場合、すぐに高単価案件を取るのは難しいです。まずはSESでさまざまなプロジェクトを経験し、開発やインフラ構築の基礎をしっかり固めましょう。さらに、上流工程やマネジメントの経験を積むために、社内研修や転職なども検討できます。
一定の実績やポートフォリオが固まった段階でフリーランスに転身すれば、より高い単価が期待できるでしょう。
フリーランスになると、確定申告や経費管理、消費税対応など、税務に関する知識が欠かせません。クラウド会計ソフトを導入するなど工夫すれば負担は軽減できますが、最低限の仕訳や税務申告の仕組みは理解しておく必要があります。とくに青色申告を活用すると節税メリットを受けられますが、帳簿作成が必須です。忙しさを理由に後回しにすると、確定申告の時期にあたふたするので要注意です。
フリーランスは、営業活動も自分で行わなければなりません。エージェントを使うとしても、面談時に自分をしっかり売り込むスキルが必要です。コミュニケーション能力やプレゼンテーション力を磨くことで、クライアントからの信頼感が増し、長期案件に結びつく可能性も高まります。人脈構築のために勉強会やSNSを活用し、積極的に情報交換を行うのもおすすめです。
フリーランスは、だれからも指示されない自由な反面、自己管理が甘いとスキルが陳腐化してしまいます。IT業界の進歩は早く、2〜3年で新たな技術やツールが主流になることも珍しくありません。日々の学習や勉強会への参加、資格取得など、学びの姿勢を維持しましょう。
技術的なアップデートを怠らなければ、長期にわたって選ばれるエンジニアになれます。
フリーランスという働き方は、経済面・時間面で大きな変動がある可能性があります。ライフイベント(結婚や子育て、住宅ローンなど)の計画を見すえながら、収入変動リスクへの対策を考えることが重要です。十分な貯蓄を作ってから独立する、家族の理解や協力を得てからフリーになっても遅くはありません。
勢いだけで踏み切るのではなく、現実的なシミュレーションを行いましょう。
SESエンジニアとして働くか、フリーランスとして独立するか。どちらにもメリットとリスクがあり、万人に正解はありません。ただ、SESで経験を積みつつ、上流工程や管理職のスキルを身につけると、高単価のフリーランス案件が狙いやすくなるのも事実です。ライフスタイルやキャリア目標を見きわめ、最適なタイミングや方法で行動に移すことが成功への近道といえます。
ぜひ本記事を参考に、将来のキャリア設計に役立ててみてください。
フリーランス案件・求人を探す